【感想】三浦しをん「愛なき世界」~恋のライバルは植物!?愛しい変わり者による恋愛小説~




おはようございます。朝木です。今回は三浦しをん先生の

「愛なき世界」

読了いたしました。

あらすじ

洋食屋の見習い・藤丸陽太は、植物学研究者をめざす本村紗英に恋をした。しかし本村は、三度の飯よりシロイヌナズナ(葉っぱ)の研究が好き。見た目が殺し屋のような教授、イモに惚れ込む老教授、サボテンを巨大化させる後輩男子など、愛おしい変わり者たちに支えられ、地道な研究に情熱を燃やす日々……人生の全てを植物に捧げる本村に、藤丸は恋の光合成を起こせるのか!?道端の草も人間も、必死に生きている。世界の隅っこが輝きだす傑作長篇。

裏表紙より抜粋

感想

まず真っ先に目を奪われたのが美しい装丁です。ブルーの中に浮かぶ煌めく植物たち。それを堪能した後に物語の扉を開くわけですが、これがまた装丁のイメージと相反していい意味でギャップを感じました。造詣が深く非常に専門的な書籍なのかと思いきや、テンポ感が非常に良く登場人物の個性に終始和みながら楽しく読み進めることが出来ました。

素敵な登場人物

まずは主人公の藤丸くん。彼の素直さといったら一級品。彼を通すことで私の植物に対する基本的な疑問は晴れていきました。読者の気持ちを代弁するかのような立ち居振る舞いで、専門的な部分にも興味関心を抱くことが出来ました。そして物語のキーとなる本村さん。彼女の植物に対する愛は本当に素晴らしい。愛なき世界の渦に飲み込まれた彼女。そんな彼女に引けを取らない研究室の個性豊かなメンバーたち。好きなことに打ち込む彼女たちの姿は、太陽よりも眩しいものでした。

一途な愛

「愛とは一体なんなのだ」と読後に本をそっと閉じた後しばし物思いに耽りました。植物に対して確かな愛を注ぐ本村さん。自分の好きなものについて話すと止まらなくなる人いますよね。時にはウザいって思うこともあるかもしれませんが、それは深い愛がある証拠。何かに対して一途な愛を注ぎ込める人は幸せだし、その人を素直な気持ちで応援できる人も間違いなく幸せだろう。

では繁殖に対する愛とは?本書にもあったように繁殖するために愛を必要としない植物と繁殖するために愛を必要とする人間。一体どちらが不思議なのだろうか。合理的に考えるのであれば愛など繁殖に必要ないのだろう。しかし人間には感情が存在するのだ。その感情こそが愛の根源であり、ある意味人間らしさとも言えるのではないでしょうか。

植物と人間の比較

本書の中で本村さんが頻繁に植物と人間を比較します。例えば人には脳があり感情があり思考がありますよね。その点植物には脳も感情もありません。次世代に命を繋ぐため淡々と太陽に向かって葉を広げ、水分や栄養を吸収するために根を伸ばす。生きるために自然と調和を生み出しているのだ。

また本村さんの言った、自分の理解が及ばないものや異なるものを「気味が悪い」「なんだかこわい」と遠ざけてしまう人間の悪い部分。これは彼女のみならず全人類がそうなのではないでしょうか。思考があるが故にこのように判断してしまう。しかしこの判断に疑問を抱き、真の意味で理解しようとするのもまた、思考や感情なのでしょう。

なにかを愛しすぎて臆病になる

私にも覚えのある感情だなあ・・・と過去のあれこれを思い出しました。好きな物を誰かに否定されることは本当に辛いことですね。ましてやその愛を否定されると自身を否定されたかのように受け取ってしまいます。その結果心を閉ざし、口を噤んでしまうこともしばしば。そんな時にありのままの自分を受け入れてくれる場所、即ち自分の居場所を見出せればそれ以上に幸せなことってそうそうないのではないでしょうか。自分らしくいれる場所、その愛を存分に発揮できることは、その人自身の支えに繋がるはずです。

最後に

装丁のデザインに込められた思いを真の意味で理解した時、ドキッとしたことを今でも覚えています。この意味は読者の皆様も探してみてください。心の底から素敵だと思ってしまいます。

終盤専門的な用語に圧倒されつつ、私の意識は物語から遠退いて行きましたが、最終的には心地よい幕引きを迎えてくれました。植物にも愛がある。そもそも愛のない世界など存在するはずもないのだ。その愛の形は本書のように情熱であることもまた然り。好きなものに対して一心不乱に情熱を注ぎ込める、そんな素敵な人に私もなりたいです。




コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です