こんばんは。朝木です。今回は三浦しをん先生の
「あの家に暮らす四人の女」

読了いたしました。
あらすじ
ここは杉並の古びた洋館。父の行方を知らない刺繍作家の佐知と気ままな母・鶴代、佐知の友人の雪乃(毒舌)と多恵美(ダメ男に甘い)の四人が暮らす。ストーカー男の闖入に謎の老人・山田も馳せ参じ、今日も笑いと珍事に事欠かない牧田家。ゆるやかに流れる日々が、心に巣くった孤独をほぐす同居物語。織田作之助賞受賞作。
裏表紙より抜粋
感想
女性のみで構成される四人の同居人の日常を愉快に描いた作品となっております。誰もが抱く不安や憤りを感じながらも、彼女たちは毎日を楽しく事件と共に過ごしていきます。その温かな日常がとにかく愛おしい。語り手がコロコロ変わるのも本書の一つの魅力ですね。
何気ない日常をライトに描く。尚且つ私たちに温かな感動を与えてくれる。心の何所かにそっと残る・・・本書はそのような物語です。
家族の在り方
家族ってこんな形もあるのだなあと羨ましく思いました。血は繋がっていなくとも友情の垣根を超え、彼女たちは家族としての繋がりを持っています。
鶴代と佐知は血縁関係にあり性格も似たようなところもありますが、多恵美や雪乃はまた違ったタイプの人間です。その絶妙なバランスと言いますか塩梅が非常に良い雰囲気を作り出していました。どこか抜けているところがある多恵美、言いたいことはハッキリと言う雪乃、母親のように包み込む優しさを持ち合わせている佐知、そしてみんなの母親代わりである鶴代。愉快な共同生活は珍事に欠くことなく「楽しい」間違いなしの面子が揃っていました。
家族という部分で特に印象に残ったのは、作者の描く父親像です。彼女たちの生活に男は不要という節が見受けられますが、何所かでそれを求めている彼女たちもいます。そういった不安定さというのが、父親との距離感なのかもしれません。常日頃は鬱陶しくて仕方ない、けれど最終的に一番頼りになるのが父親という存在なのだ。私自身も父親とは青春時代に何度も衝突を繰り返していました。その時のぎこちなさを鮮明に思い出しましたね。
蓼食う虫も好き好き
「蓼食う虫も好き好き」という言葉があるように、人に対する好みも千差万別。多恵美のように自分は夢を終える人間ではない、だからこそ人生のパートナーとなる人には夢を追いかけて欲しいと。結果ヒモになるような頼りない男が寄ってくるのかも知れませんね・・・。
また佐知のように趣味を延長し仕事にしているタイプの人には、その情熱が理解されない事が一番納得のいかないようですね。「裁縫?趣味の延長なら仕事の合間にしなよ」本気で取り組んでいる相手に向かってこれほど失礼な言葉はありません。人付き合いにおいて理解者となる事が大切なのだと本書から学びました。
愛とはなんぞ
佐知と雪乃、アラサー独身女性の二人組が恋愛について部屋で語り合っていたシーンは修学旅行での恋話を思わせてくれました。甘酸っぱい失恋、否、不恋とでも言えるような一瞬のトキメキ。ただただタイミングと巡り合わせが悪かった・・・。偶然を運命にする力が無いというのは、ここまでも悲しいことなのかと佐知を非常に応援したくなりました。
佐知と雪乃は恋愛観が真逆なのに、よく二人で恋愛について語り合います。ある意味真逆だからこそ自分とは違う意見を聞いて、活かすことができるのでしょうか。私の場合だとぶつかり合ってばかりで、話の進まない様子しか想像できません(笑)
最後に
「あの」の指示語が指す意味に興味を持ち手に取った一冊。それなりに年齢を重ねた人の女性が住む家の・・・生活がどのようなものか好奇心を煽られてしまいました。
私の予想通り愉快で見ていて飽きない理想の生活がそこにはありました。非常に羨ましい・・・血の繋がりだけが家族ではない、彼女たちの絆の深さや血のつながりという垣根を超えた友情も、「一つの家族」であるのだと学びました。
コメントを残す