【感想】大山淳子「あずかりやさん」またいつか読み返したいと思える一冊




こんにちは。朝木です。今回は大山淳子先生の

「あずかりやさん」

読了いたしました。

あらすじ

「一日百円で、どんなものでも預かります」。東京の下町にある商店街のはじでひっそりと営業する「あずかりやさん」。店を訪れる客たちは、さまざまな事情を抱えて「あるもの」を預けようとするのだが……。「猫弁」シリーズで大人気の著者が紡ぐ、ほっこり温かな人情物語。

裏表紙より抜粋

感想

まず最初に目を惹いたのが独特の表紙。なんと私好みの表紙なのでしょう・・・奇妙なタイトル、そして古風でどこか趣のある暖簾。買わない理由がなかったですね。そして本書の内容ですが、非常に心温まる作品となっておりました。「来るもの拒まず、帰りを待つ場所」私は「あずかりやさん」をそんな風に感じました。第三者の目線から語られる本書の物語は、柔らかくそっと心を撫でるかのように私の心に響きました。優しい文章や独特の雰囲気、全てを受け入れる懐かしい感覚。それら全てが本書の醍醐味でしょう。

あずかりやさん

第三者の形で語られる作品に触れるのは初めてなのですが、いいものですね。私達の生活では当たり前のように存在していて、けれど「モノ」だからその心は感じることができない。ならば想像してみようじゃないかと、本書が諭してくれた気がします。

「あずかりやさん」という現代では想像もできないビジネス。そこへ預けられる「モノ」にはどのような意味があり、想いが込められているのか。それは預ける人や「モノ」によって様々です。他人からすれば何の変哲もないただの「モノ」でも、預けた人にとっては何か重要な意味があり、とても大切にしている。そこへ主人の大らかな人間性も加わり、とても不思議な世界観が形成されていました。そしてその不思議さが心地良く、懐かしさのようなものを感じさせてくれました。

ミスター・クリスティ

次の語り手は自転車でした。希少性が高く値段が高いことから買い手が現れず、店に来て以来ずっと天井に飾ってあった自転車。そこへ複雑な家庭環境で育つ心優しい少年が現れ、その自転車を購入していきます。本来乗り物であるはずの自転車が、飾り物として扱われることに対して抱く想い?とでも言うのでしょうか。そのことに思わず微笑んでしまいました。自転車に心なんてあるはずがないだろうと思いがちですが、本書に触れると不思議と「うちにある使ってない道具もこんな風に思ってるのかなあ」なんて頭に浮かべてしまいます。

そして自転車屋の親父と自転車の愛。これには笑いながらも心地良さを感じました。きっと道具にも心はあり、私達の人間性を見ているのだと。

トロイメライ

仕事に生きた努力家の物語。そんな彼は人生の散り際に仕事のみに集中し過ぎたからか、周囲に信頼できる人間がいないことに気がついた。そこへお忍びで「あずかりやさん」に来たわけです。きっとそこでの店主との会話は彼にとって何十年と生きた人生の中でも、飛び抜けて気を許せる空間と時間だったのでしょう。「全てを受け入れ、見送る場所」そんな場所が私の町にもあったら素敵です。

星と王子さま

私たちにとっての大切なもの。それは人によりけりですが、一つ言えることが「本当に大切なものは目に見えない」ということ。「星の王子さま」の有名な言葉ですね。私もこの本を大切にしています。例えば命、人との絆、愛や時間などが当てはまるかと思います。大切なものは決して目に見えず、私たちから隠れているのです。であれば、心で感じるしかありませんね。誰かと共に過ごす時間を、変わらず迎えてくれる居場所や故郷を。幼少期に見ていた景色が色褪せずそのままの形で残っている場所。それはきっとあなたの宝物です。あなたの支えになるはずです。あなたの心が傷つくことがあれば、思う存分そこで涙を流してください。変わらない笑顔で迎えてくれる人がいるはずです。

店主の恋

お次はペット視点。非常に愉快な語り手です。思わず顔が綻びました。石鹸さん・・・思考速度よりも早く体が動いた結果なのでしょう。彼女の行動と引き換えに救われた命。そのような行動ができる人だからこそ、店主は彼女に心で惹かれたのでしょう。なんと儚く切ない恋なのだろうか・・・主人は漸く仕事に事情をはさみましたね。主人の石鹸さんに対する想いが誠実さを上回った結果、永遠の時を待ち続けることになる。変わらずにあった町も人も時間とともに変わりゆく。私達の心もそうなのでしょうか。時の経過とともに忘れゆく想いがあるのかもしれません。

エピローグ

店主と同じ世界を感じるようになった猫。しかし世界が見えないなんてことはなかったのです。匂いも音も感じる、そしてちょっぴり世界が美しくなったのだと。そこで小さな奇跡を二人して待ち続けるのです。数奇な運命です・・・けれど猫からしてみれば、店主と同じ世界に立てたことは幸福なのかもしれません。大好きな人と同じ世界を同じ感じ方で生きることが出来るのですから。後はもう、幸せになってほしい、ただそれだけでした。

ひだりてさん

小さな小さな嘘が自身の生活環境を大きく乱してしまうことってありますよね。それも小さな女の子が苦しみから逃れるためについた嘘。健気なものです、誰だってその年に「お前臭うぞ」なんて言われたら傷つくのは当たり前。しかし彼女は最後には謝ろうと決心したのです。彼女自身罪悪感もあったのでしょう。でもそれ以上に母親が大切にしているものだと改めて気づき、だからこそ彼女は気恥ずかしさを乗り越えて謝ることが出来た。これだけのことなのに非常にほっこりしたのを今でも忘れられません。子供の決心にもそれなりの覚悟があるのだと、今になって私も気づけたのでしょう。

最後に

本書にある物語全てにほっこりする温かさが詰め込まれていました。食後の空いた時間や仕事の休憩、休日を使って一日で読み切るのも良し。そして思うはず、「ああ、またいつか読み返そう」「誰かに読んでもらいたい」と。あなたも純粋な気持ちで本書に向き合ってみませんか?




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