【感想】原田マハ「暗幕のゲルニカ」巨匠の残した傑作の真意を確かめる・・・




こんにちは。朝木です。少し間が空いてしまいましたね。原田マハ先生の

「暗幕のゲルニカ」

読了いたしました。

あらすじ

一枚の絵が、戦争を止める。私は信じる、絵画の力を。手に汗握るアートサスペンス! 反戦のシンボルにして2 0世紀を代表する絵画、ピカソの〈ゲルニカ〉。国連本部のロビーに飾られていたこの名画のタペストリーが、2003年のある日、突然姿を消した―― 誰が〈ゲルニカ〉を隠したのか? ベストセラー『楽園のカンヴァス』から4年。現代のニューヨーク、スペインと大戦前のパリが交錯する、知的スリルにあふれた長編小説。

Amazonより抜粋

感想

今こそ私たちは「ゲルニカ」の真意を確かめるべきではないでしょうか。

本書はピカソに関わる二人の女性の人生を中心に物語が展開されています。違う時代(現代とスペイン内戦や第一次世界大戦)に登場する二人の女性を交互に比べ時空を超え繋がるといった手法で描かれています。二人の女性は同じくピカソとその作品「ゲルニカ」に人生を翻弄されつつも、アートの力を信じ戦争という名の暴力に立ち向かう勇敢な姿に何度も胸を打たれました。

「ゲルニカ」とは一体何なのでしょうか。本書を読むまでピカソの描いた一つの絵、私にとってはたったそれだけでした。しかし実際は、ピカソの反戦の証であり、市民の戦争に対する戦争なのだと。彼自身が抱いた憎悪や憤怒といった負の感情が絶え間なく注ぎ込まれていたのでしょうね。戦争に欠かせない爆撃や被災した建物も流血も描かれていない。それなのに最悪という状態を表現できているのです。絶えることのない負の連鎖を断ち切るためにこの絵は創造されたのだとありました。一体どのような作品を描き上げれば、人々の心を突き動かすことができるのでしょうか。本書を通して少しだけわかったような気もします。

武力とは何か。暴力は前触れもなく唐突に振るわれる。戦争について考えさせられる描写が多かったです。報復と声を上げ正義を振りかざし暴走することは本当に正義なのでしょうか。しかし両者とも彼らなりの正義を掲げて戦っているのは明白。畢竟、何が全世界の人々にとって正しいのか、最優先すべきなのは国民であり世界ではないと。正義同士の衝突を傍観することは非常にやるせない気持ちになります。しかし、被害にあった一般市民からすれば負の連鎖を止めることこそが一番の望みだったのではないでしょうか。

そして物語は「ゲルニカ」をきっかけとなり重大な事件を引き起こすことになります。この事件を通して絵の持つメッセージ性作者の想いといった、絵に込められた魂なようなものを強く感じました。アートには世界を変える力がある。この言葉の本当の意味を理解することができた気がします。

本書を読了後、絵の価値に新たな発見がありました。ただ金銭的な価値だけではなく、今回で言えばテロリストでさえ利用価値があるということ。見て感想を抱いて終わるのではなく、その次の行動へ繋がってしまう。美術的な価値や金銭的な価値だけではなく、良くも悪くも人間の思考をも揺るがしかねない価値があると感じました。そして教科書だけでは知ることのできない戦争の凄惨さを教えてくれました。特にヒトラーによるユダヤ人の迫害。ドイツの進軍がパリにまで及び、陥落の一報を受けたときは自分の故郷が蹂躙されたかのように戦慄が走りました。終戦で終わりではない、これから残された市民たちがどれだけ苦しむのか。改めて戦争だけは、武力行使だけはしてはならないと強く感じました。

本書のヒューマンドラマを経て戦争によって残された者の寂寥感もひしひしと伝わってきました。もうこの世に大切な人はいない、自分には生きる希望がないのだと。このように悲観しているシーンがいくつもありました。ラストシーンの衝撃はこの先もずっと忘れないでしょう。ゲルニカのために戦った人たちのこれから。新たな旅立ちの予感に涙が堪えきれませんでした。アートの力で世界を変えていく。何度も言いますが言葉通りにアートには力があるのだと認識を改めました。壁に飾って鑑賞するだけではないのだと。そこから生まれた思いこそが創造主の本当の望みなのですから。

最後に

本書のテーマは「アート」「戦争」と言ったところでしょうか。どれだけ時間が経とうと決して色褪せることのないピカソのメッセージ。これは今後も私たち自身が理解し守り抜いていかなければならないのでしょう。今も続いている負の連鎖を断ち切るために。戦争を巡る物語の中でも男女の恋愛が描かれている部分が実にマハさんらしい作品であったと言えます。天才の隣に相応しいのは誰なのか。亡命することで失った大切な存在。戦争に巻き込まれて亡くなった命。どれもこれも過酷な運命が付きまとう内容でした。

本書はマハさんのピカソに対する敬愛が溢れている渾身の一作です。無知の私でもアートの世界に飛び込めました。しかし読んでいて不満点もありました。同じ説明が同じ表現が繰り返されていること。少々くどく感じ読んでいて疲れる上、なかなかページをめくる指が進みませんでした。

しかし現在私が読んでいる間にも世間では北朝鮮とアメリカの問題が続いています。本書を読んでいて現在と比較しながら読むこともできました。だからこそ私たちは過去の巨匠たちが残していったメッセージをもう一度確認すべきなのではないでしょうか。今一度現況を振り返るためにも一度は読んでおくべきです。不満点もありましたが、内容は深い意味があり考えさせられることがたくさんあります。是非一度手に取ってみてください。




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