【感想】恩田陸「光の帝国 常野物語」不思議な力を持つ特別な人達の物語




こんにちは。朝木です。今回は恩田陸先生の

「光の帝国 常野物語」

読了いたしました。

あらすじ

膨大な書物を暗記するちから、遠くの出来事を知るちから、近い未来を見通すちから「常野」から来たといわれる彼らには、みなそれぞれ不思議な能力があった。穏やかで知的で、権力への志向を持たず、ふつうの人々の中に埋もれてひっそりと暮らす人々。彼らは何のために存在し、どこへ帰っていこうとしているのか?不思議な優しさと淡い悲しみに満ちた、常野一族をめぐる連作短編集。

裏表紙より抜粋

感想

常識が通用しない。だからこそこの類の物語は輝き続けるのだ。作者の不思議な世界観に魅了され、ページを捲る手が止まりませんでした。ジャンル分けするのであればどこに位置するのでしょうね。ファンタジーという言葉だけで括ることのできない、何処か現実に則した深い魅力がありました。

不思議な力を持つ地域や人々、そしてその力に人生を左右されてきた彼らは私たちに何を伝えてくれたのか。それは「特別」であることは悪いことではないということ。人と違う部分があるということはむしろ利点であり強みなのだ。しかし「人と違う」という部分を社会の枠組みで捉えたとき、その「特別」は異質なものとして扱われてしまうのだ。この世はどこまでも排他的で同一を重んじるものである。しかし本当にそれで良いのだろうか。人と違うということは集団から排除されてしまうほど悪いことなのだろうか。今一度他人に対する優しさを考え直さなければならないのかもしれない。本書はそういったことを教えてくれました。

「常に在野であれ。権力を持たず、群れず、地に溶け込んで」この言葉の真意こそが社会を生き抜く処世術なのかもしれません。常に世論であり、誰かを支配するのではない。愚衆という言葉があるように人は群れをなすほど愚かになる。そして民とともにその土地に溶け込むのだと。

光の帝国

私が本書で一番好きな物語です。

特殊な能力を待つが故に、執拗に実験に駆り出される常野の人々。そんな彼らの儚くも力強い生き様に勇気をもらいました。最後の最後まで生きることを諦めなかった彼ら。厳しい環境で生き抜いてきたからこそ、「普通に生きる」ことへの渇望が人一倍強かったのでしょう。人は永遠を望みますが、果たしてそれは本当に幸せなのでしょうか。ツル先生のように後悔を一生背負って何百年も生きていかなければならい。そんな彼はどのような思いで「死なせて下さい」と願ったのでしょう。きっと私たちが想像できないほどの苦しみを背負っていたに違いない。時に永遠とは地獄なのだということを胸に刻まなければなりません。永遠に帰ってくることのない彼らを待ち続けることがどれだけ自身を苦しめることになるのか・・・

最後に

人間の魅力と特別なちからに誰もが懐かしさを感じるでしょう。それと同時に現代社会の生き辛さを再確認するはず。けれどそれは決して悪いことだけではない。この社会に不特定多数の敵が存在していようと、同時にあなたのことを大切に思ってくれている人も必ず存在している。人の温もりが凝縮された物語。あなたもいかがですか?ずっと常野の物語を追い続けたい・・・続編が待ち遠しいです。




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