こんにちは。朝木です。原田マハ先生の
「本日は、お日柄もよく」

読了いたしました。
あらすじ
OL二ノ宮こと葉は、想いをよせていた幼なじみ厚志の結婚式に最悪の気分で出席していた。ところがその結婚式で涙が溢れるほど感動する衝撃的なスピーチに出会う。それは伝説のスピーチライター久遠久美の祝辞だった。空気を一変させる言葉に魅せられてしまったこと葉はすぐに弟子入り。久美の教えを受け、「政権交代」を叫ぶ野党のスピーチライターに抜擢された! 目頭が熱くなるお仕事小説。
裏表紙より抜粋
感想
困難に向かい合ったとき、もうだめだ、と思ったとき、想像してみるといい。三時間後の君、涙がとまっている。二十四時間後の君、涙は乾いている。二日後の君、顔を上げている。三日後の君、歩き出している。
読んでいる最中にも言葉の持つ力に魅了され、言葉一つ一つにこんなにも深い意味が込められているのだと改めて感じました。言葉の持つ力ってすごいですよね。人前で話すことが決して得意ではなくとも、本気で考え悩むことで本人の思いや熱意が言葉に宿る。そしてその言葉は聴衆の心を揺るがす大きなきっかけとなり、波となって伝播していく。本書はスピーチライターのお仕事だけではなく、こと葉と久美さんの親子のような会話、随所にちりばめられた恋愛要素、政治にかける熱い思いなど楽しめる要素が盛りだくさんでした。私のお気に入りのシーンをネタバレを最小限に抑えて紹介したいと思います。
国会討論の場での演説
非常に胸が熱くなり、言葉の持つ力が本を超えて、耳を通り抜け、心まで伝わってきました。読んでいるはずなのに、実際に国会で討論を聞いているかのような感覚。文章自体は稚拙な部分があるかもしれません。しかしそこに味が出ている。それはマハさんなりの政治に対する固いイメージの払拭であり、私のような政治に無関心で知識のない人間でも読みやすいように表現してくれたのではないでしょうか。
選挙における街頭演説
こちらも発する言葉一つ一つに血が通い熱を帯びていました。政治の世界のお話でこんなにも涙がこみ上げてくるとは思いもしませんでした。政治家の発する言葉の重み、そして世の中を変えたいと本気で思う強い気持ちがこんなにも詰まっているのだと私に教えてくれました。私自身、この国を変えることに関心も興味も情熱を持たない国民であり、自分の持つ一票に何の意味も重みもないと考えていました。しかし本書の演説で語られた熱い言葉数々、メッセージを受け取り考え直しました。もっと国、政治、選挙について知るべきなのだと、人の言葉に耳を傾けてみるべきなのだと。
厚志が絶望の淵に立たされていた時
本当に弱っている人には誰かがそばにいて抱きしめるだけで、幾千の言葉の代わりになり、そして本当に歩き出そうとしている人には、誰かにかけてもらった言葉が何よりの励みになる。言葉のプロの行動に正直驚きを隠せませんでした。むしろ言葉を知っているからこそ、言葉の代わりになる行動を知っていたのでしょう。
そして物語のラスト
幸せな気持ちでいっぱいになりました。「本日は、お日柄もよく」感極まって涙が溢れました。本当に格好良かった・・・ネタバレを避けたのでだいぶ抽象的になってしまいましたが。本書を読んでいると、気持ちと比例して体まで反応しました。感動や喜びで涙が出たり、壮絶な展開に鳥肌が立ったり、緊張感から解き放たれて体が緩んだり・・・読後は独特の疲れを伴いながら爽快感に包まれました。(もちろんいい意味の疲れです)言織っていい名前ですよね。上品な人に育ってほしい、言葉で人と人とを「繋ぐ」存在になってほしい。こういった親の願いが名前にこもっているのではないでしょうか。
最後に
人によっては本書のストーリーはうまく事が進みすぎて現実味がなかったとおっしゃる方もいるのではないでしょうか。その部分に関して私も否定はしません。ですがこれも人生における道筋の一つでありこの先の未来がどうなるかなんて誰にもわからない。がむしゃらに精一杯生きて今できることに全力で取り組む。そうすれば自ずと道が見えてくる。そんな風にマハさんのメッセージが込められているようにも感じました。本書の内容が聞きなれない「スピーチライター」の仕事であったり、「政治」が含まれているお堅い小説なのではないか、と思って手を伸ばしにくかった方。是非読んでみてください。政治の部分も非常に読みやすく、知識のない人間でもわかりやすく描かれています。読後の爽快感は最近読んだ本の中でも上位に入ります。
胸を熱くすること間違いなしです。
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