【感想】原田マハ「星がひとつほしいとの祈り」女性として生きる強さに胸を打たれる




こんにちは。朝木です。今回は原田マハ先生の

「星がひとつほしいとの祈り」

読了いたしました。各短篇集に分けて感想を述べたいと思います。

あらすじ

時代がどんなに困難でもあなたという星は輝き続ける。売れっ子コピーライターの文香は、出張後に寄った道後温泉の宿でマッサージ師の老女と出会う。盲目のその人は上品な言葉遣いで、戦時中の令嬢だった自らの悲恋、献身的な女中との交流を語り始め・・・・・・(「星がひとつほしいとの祈り」)。表題作ほか、娘として妻として母として、20代から50代まで各世代女性の希望と祈りを見つめ続けた物語の数々。

裏表紙より抜粋

感想

椿姫

1人の女性の許されない恋を描いたお話。

冒頭部分から救いようのない現実を突きつけられ、人間に身勝手さ理不尽さふがいなさが忠実に表現されていました。命を授かることに対して何の覚悟もなかったのでしょうか。今一度「性行為」の意味を考え直したい。このお話に対しては嫌悪感を隠しきれませんでした。しかし、酷く理不尽極まりない現実の中にも小さな温もりもありました。堕胎した自分と父親・母親になる高校生カップルとの間にそれを羨ましくも嬉しくも思う自分がいたのです。この類の話で傷つくのは決まって女性であり、それは心身共に大きなものになります。

夜明けまで

すれ違い続けた母と娘の物語。

大切なものは失ってからでは遅いのだマハさんの作品にはメッセージを諭してくれるような描写が多くみられます。このお話に関しても許されない恋、ここに関わってくる人間のふがいなさ身勝手さが躊躇なく表現されていたように思えます。許されない恋というのは短絡的には非常に満たされるかもしれません。しかし、それは今後残された者にとってどう映るのか。そのことも踏まえてなお、ひた走るのであれば少々利己主義的にも思えてきます。短編なので仕方なかったのかもしれないが、もう少し別の立場の人間の心理描写もほしかったです。

星がひとつほしいとの祈り

表題作にもなっている太平洋戦争を生き抜いた盲目の少女の人生の変遷を描いた作品。

この少女とその世話係の「絆」がとても切なく心温まります。盲目の少女は光のない世界でをすることで一つのを見つけます。そしてそのは次第に遠くなるが、少女の周囲には別のが存在していたことを。多くのものに支えられながら生きているのだと。世話係の純粋無垢でどこまでも少女を思いやる姿勢に目頭が熱くなりました。気持ちの繋がりは確かなのに環境がそれを許さない、悲恋とはまさにこのことなのでしょう。無力な人間は祈ることでしか人を救えない。少女はこの無力さに罪の意識を覚え打ちひしがれていました。結果的に大切な人を三度も失った、それでも生きていくことを選んだ少女。そこには大切な人との思い出が大きく影響していたのだと。少女の人生は壮大なストーリーで描かれており非常に感動しました。しかしオチがどうも納得できませんでした。

寄り道

原田マハ先生の作品を知る人なら・・・あっ!!!となるお話。二人の女性の人生の寄り道を描いた作品。

白神山地での不思議な縁が描かれていました。それぞれの世代の女性たちが集まって人生について語り合っているシーンは非常にほのぼのとしていて心が和みました。「寄り道してたらこんな年や。」そう語る女性。しかし。その寄り道にこそ、彼女たちの人生の多くが詰まっていたのではないでしょうか。そして他人の窮地に協力する人たちの人良さとでも言うべきだろうか、非常に心温まるものがありました。こういった日常的なストーリーを楽しめるのも本書の良さかもしれないです。

斉唱

壊れかけた親子の関係をトキを通して取り戻すお話。

感情が欠落したように、喜怒哀楽を表に出さない娘。そんな娘の一言からトキを見に佐渡島へ。最後のトキとそれに関わった一人の男性の物語に胸を打たれました。生物と人とが織りなす物語は厳しさ優しさで満ち溢れています。自然界における人間の立場、それを完膚なきまでにふるい生物淘汰を繰り返してきた過去。そんなトキの話を通して娘の心が解け始めるのだ。そこにこのお話の魅力が詰まっていました。

長良川

川に魅せられた真っ直ぐなまでに純粋な夫婦の物語。

綺麗とはまさにこの夫婦のことを指すのだろう。何が綺麗ってこの夫婦の人生そのものが美しすぎます。「あなたのえくぼ、一生絶やさないようにします。」このフレーズに込められた思いは、どれだけの優しさ温かさに溢れているのだろうか。本当に澄んだ綺麗な物語でした。

沈下橋

罪を犯した元娘の再生を願う元母との再会を描いた物語。

「観光に来たのなら、この土地を見て、音を聞き、匂いを嗅いで、心を休めればいいのに。」この言葉が、何か忘れていたものを思い出させてくれたような気がしました。元娘からの一本の電話、それは助けを求める連絡でした。どれだけ距離が離れ時間が経とうが、親子だった関係が揺らぐことはありません。血のつながりはなくとも、母は母であり家族なのだと。この家族愛がとても心地いい・・・人は何度だってやり直せる。そう信じる母の娘に対する思いやりに感動しました。

最後に

本書では一貫して女性の「性」がストレートに描かれ、女性たちの自分らしさが忠実に表現されていました。そこには倫理的に許されることでなくても、自分のために全てを薙ぎ払って全てを受け入れるというような覚悟とも思えるものが描かれていました。どんなことがあっても私は私で生きていく。決して揺らぐことはないのだと。強い意志とも言えるものが現れていました。本書には各お話に出てくる風景を楽しみながら読むこともできます。そこでは少々訛りがきつく、読むことが億劫になるかもしれませんが最後まで読んで損はありません。個人的には「星がひとつほしいとの祈り」を短編で収めるのではなく、一冊の小説として世に出回って欲しかったです。それだけ中身の詰まっているお話となっております。是非、一度手に取ってみてください。




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