【感想】原田マハ「奇跡の人」~子供は樹木である~教育の本来の姿とは




こんばんは。朝木です。原田マハ先生の

「奇跡の人」

読了いたしました。

あらすじ

アメリカ留学帰りの去場安のもとに、伊藤博文から手紙が届いた。「盲目で、耳が聞こえず、口も利けない少女」が青森県広前の名家にいるという。明治二十年、教育係として招かれた安はその少女、介良れんに出会った。使用人たちに「けものの子」のように扱われ、暗い蔵に閉じ込められていたが、れんは強烈な光を放っていた。彼女に眠っている才能を開花させるために、二人の長い闘いが始まった――。著者渾身の感動傑作!

裏表紙より抜粋

感想

「奇跡の人」読者の皆さんも一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。本書はタイトルから伺えるように、ヘレン・ケラーとアン・サリヴァンの二人の物語を翻訳し再構築した作品です。実際この作風に賛否両論、意見は多々ありますが、私は胸を張って本書をオススメします。内容はわかっていますが、それでもドキドキハラハラさせてくれるのは、原田マハ先生の表現力に他ならない。読後はページがふやけるほど感涙し、何より「人として生きること」「教育」について考えさせられました。

男尊女卑の時代

明治維新直後の日本、私は歴史の教材などでしか目にしたことはありませんが、本書のように男尊女卑の時代だったのでしょう。本書の中に「女は子供産み育てるだけの存在」とありました。今では想像もできないような言葉です。そして男尊女卑に伴い女子教育は非常に停滞していた、と言うよりも施されていなかったに等しいのでしょう。「女が文字を書けて何になる」この言葉に驚嘆を禁じ得ませんでした。このような状況下で女子教育の向上と男尊女卑の解消を掲げ帰国後、活動していくわけですがどう考えても前途多難であり四面楚歌。家族である父ですら娘を理解していない状態で、彼女これからどのように活動していくのか。まさに歴史を学んでいる感覚で読み進めました。

歪な家庭環境

目の前で振るわれる当然のように振るわれる暴力。今の時代だからこそ、世間に知れ渡れば法律が守ってくれますね。けれど昔は違ったのでしょう・・・全盲で耳も不自由、その上話すこともままらない三重苦の少女れん。そんな娘の存在を大切に思う母親と疎ましく思う父親。

そんな父がれんの頬を引っ叩く描写では、非常に胸が締め付けられました。その状況を目にした安はアメリカの友人に向けた手紙の中で、「これから救わなければならない少女を前に何もできなかった」と手紙に綴っていました。この時の自身の無力さ、そして後悔の念を考えると余計に胸が苦しくなったことをはっきりと覚えています。望まれて生まれた命のはずなのに、なぜれんはこのような扱いを受けなければならないのだろうか。時代の闇の深さを痛感しました。

そして母の我が子に対する愛の重さ。当初は愛娘を藁にも縋る思い出救った母の姿に感動し、安の数少ないの味方だと思っていましたが、行き過ぎた愛は人をダメにすることもあるのだ。それをれんの母の姿を通すことで学びました。甘やかすだけが教育ではない、三重苦というハンデを背負いながらも「人として生きていく」教育が彼女には必要だったのだ。

2人の関係を通して学んだ教育

本書で描かれる「教育」は無償の愛という言葉では、言い表せないほど強く清い輝きを放っていました。「子供の可能性を信じ、愛情をもって育てれば、きっと才能を開花させることができる」正面から本気で向き合う教育の大切さを本書から学びました。

安はどのような状況においても、れんの輝きや可能性を信じ、苦境を乗り越えてきました。苦しいことから逃げ出さず、諦めずに立ち向かう。当たり前のことのようですが、これって物凄いことですよね。この姿は私たちに「教育」の基本を教えてくれました。思考を重ね創意工夫に務める彼女の姿を、私たちは真似しなければなりません。

70年の時を越えて

何より私が本書で感動したシーンがある。それはキワが一人で何も言わずに村を出ていく決意をした部分。

盲目の少女キワはれんの父が来たことで全てを悟ったというのでしょうか。「私がれんと一緒にいるのを知られてはいけない」そんなキワの声が私の脳裏をよぎりました。果たして過去これほど感動したことがあっただろうか。小さな幸せを手にしたばかりの幼気な少女が、身分の差から現実を受け入れ、非日常的な生活に自ら終止符を打ったのだ。2人の絆の深さに涙が止まりませんでした。そんなキワがれんに与えたもの。それはどれもかけがえのないたからもので、彼女たちが通じ合うことで始めて生まれた友情なのだ。

そしてこのまま残酷な友情の終わりを迎えるのかと思いきや、プロローグに繋がるわけですね。たった一言「ありがとう。大好き」を伝えるために70年。時代の背景や当時の環境など要因は多々あったのでしょう。70年の時を越えて再会を果たす二人の姿に、温かい涙をこらえることが出来ませんでした。久しぶりに真の絆を目の当たりにした気がします。

最後に

本書で描かれた三味線の音色ってどんなものだろう・・・とずっと物思いに耽っています。聴いた者が必ず涙を流す三味線奏者が存在する。この点に関しては実在しているんじゃ・・・?なんて考えたりもしています。

特に生きることに疲れた方やこれから親になる方、教師として現場で活躍している方などに是非読んでいただきたい。本書から得られる勇気や教育の姿勢はあなたにとって力となり非常にかけがえのない体験になるはずです。




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