【感想】本多孝好「MOMENT」人は死を前にして何を思う?感動が静かに胸を打つ。




こんにちは。朝木です。本多孝好先生の

「MOMENT」

読了いたしました。

あらすじ

死ぬ前にひとつ願いがかなうとしたら・・・・・・。病院でバイトをする大学生の「僕」。ある末期患者の願いを叶えた事から、彼の元には患者たちの最後の願いが寄せられるようになる。恋心、家族への愛、死に対する恐怖、そして癒えることのない深い悲しみ。願いに込められた命の真実に彼の心は揺れ動く。ひとは人生の終わりに誰を想い、何を願うのか。そこにある小さいけれど確かな希望。静かに胸を打つ物語。

裏表紙より抜粋

感想

FACE

戦争を生き残った老人の後悔の物語

戦争の結果ではなく戦場で敵味方入り混じる混沌とした時間での出来事が描かれており、特にその部分の描写が鮮烈で過酷さや残酷さといったものがひしひしと伝わってきた。死と恐怖、窮地に立った時それは逆転する。そこには理屈などない。ただ本能的に何かしなければならないという衝動にかられる。そしてそこでは集団の暴力が個人を標的にふるわれることとなる。ただ恐怖に対して冷静に理屈で行動したというだけで、保守的な集団から命を奪われることになる。戦争時も今も変わらない、人というのは本質的には何も変わらない利己的な生き物なのかもしれない。

時間をかけて積み上げてきたものを壊すのは一瞬。人は変われる、それは表面上を取り繕っただけのもの、さっきも述べたように本質的には何も変わらない。そして信じる者は自分の目で確かる、この物語はそう教えてくれた。

WISH

命の灯を燃やし続ける少女の物語

いつ命の灯火が消えてもおかしくない儚い少女。その少女は病室に生けられている五日ごとに枯れては捨てられて行く一輪の花をどんな思いで眺めているのか。これほど儚く心に沁みる物語が他にあるだろうか。そのような中で描かれる日常はどれもが澄んでいて綺麗で別の世界を眺めているかのよう。悪いことでも許してしまえる変な優しさに取り憑かれてしまう。読んでいて本当に心地いい。それと同時に涙が滂沱となって頬を伝った。誰よりも恐怖が身近であるがゆえにそれを口にできない。そしてその我慢が、上辺だけの笑顔が限界を超えたときにその人の胸に秘めた想いが本当の言葉になる。病気の人と普通の人、その決定的な違いは「生」への執着心なのかもしれない。生きることの大切さを教えてくれた物語だった。

FIREFLY

病気と闘う一人の孤独な女性の物語

この物語の女性と先ほどの物語の少女、この二人が出会うと何か変わったのだろうか。お互いに考え方が変わるのかもしれない、同じ場所にいても考えたり思ったりすることは異なる。本当に人間って不思議なものだ。必死に普通に生きてきた、たったそれだけだったのに気がつけば周りには誰もいなくて一人ぼっちだった。それが死に直面して急に想起させられて、一体何をやってきたのだろうかと。ならば一人で頑張ることはなのか?一人で頑張ってきた人間は間違っていたのか?みんなでやることが正解であり、それ以外は認められないのか?なぜ人はそういう解釈しかできないのだろう。そのような世界は間違っていると。

MOMENT

死に直面した男性の想いの物語。

生きていることと、死んでいくことは違う。進み過ぎた医療技術の中で苦しみながらも医学的な意味では生きている患者、それは果たして患者にとって幸せなのだろうか。安楽死との狭間で医学の倫理観が問われていた。生きた証を残すため、残される者に苦労をかけないために死を急ぐことは重要な事なのだろうか。かけがえのない命の重みとは自分だけでは知り得ないことだろう。周囲との繋がりがあってこそ、その重みはどんどん増す。その命は自分だけのものではないのだと。

似たようなところで生まれて、似たようなとこで育って、食ってきたもんだって大して変わらないのにどうして人はこんなにも違うのか。それが個性いうものなのだろうか。

 最後に

生と死の両方を一番身近に感じる病院で、学んだり感じたりすることは何か特別な意味があるに違いない。死んでいく患者とそれを救う医師。果たして救われることが幸せなのか死ぬことが幸せなのか、そして人は死に直面した時何を想うのだろうか。生への執着か、それとも後悔か、はたまた安堵の表情を、笑顔を浮かべるのだろうか。

「生と死」それを本書通して感じてみてください。きっと自身の日常を特別に思うはず。




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