【感想】森沢明夫「夏美のホタル」一生の思い出となる夏休みを・・・




こんばんは。朝木です。今回は森沢明夫先生の

「夏美のホタル」

読了いたしました。

あらすじ

写真家志望の大学生・相羽慎吾。卒業制作間近、彼女の夏美と出かけた山里で、古びたよろずや「たけ屋」を見付ける。そこでひっそりと暮らす母子・ヤスばあちゃんと地蔵さんに、温かく迎え入れられた慎吾たちは、夏休みを「たけ屋」の離れで暮らすことに。夏空の下で過ごす毎日は、飽きることなくシャッターを切らせる。やがて、地蔵さんの哀しい過去を知った慎吾は、自らできることを探し始めるが・・・・・・。心の故郷の物語。

裏表紙より抜粋

感想

やっぱり好きです。田舎の雰囲気とでも言うのでしょうか・・・見える景色や自然の空気に生き物たち、そして情緒的な人たち。今も文章を綴りながら感傷的な思いに耽っています。

田舎での生活

緩慢な時間の流れ。田舎独特のノスタルジックな雰囲気に酔いしれることが出来ました。古びた平家、外に設置してある冷凍のアイスケース、郵便ポスト。どれを取っても何処か懐かしさを感じ、故郷を思い出すような描写の数々。そして人当たりの良い店主たち。彼らの会話を聞いているだけで、綻ぶような笑顔をしていたことが想像できました。

そんな田舎での夏休み、誰でも童心にかえり無邪気な笑顔を振りまくことができるのだろう。森の探検や川遊び、虫取りに魚釣り、そして本業である写真撮影。きっとそこで切られたシャッターに写るものというのは、きっと眩しくて温かくて・・・写真を見た誰もが笑顔になるような要素で一杯なはずです。私も小学生の時代に祖母の家で夏休みを満喫したことを思い出します。毎朝ニワトリの声で起きるのが好きだったなあ・・・

地蔵さん

地蔵さんの人生。少なからず私は胸を痛めました。最愛のお嫁さんと子供に迷惑をかけたくないがために、お別れ・・・離婚を申し出た。自ら申し出た反面、会いたいと言う気持ちはあったがそれを口にすることは叶わなかったのだ。そんな彼が母から言われた言葉。「生まれてきてくれてありがとう。」この言葉は私自身の人生においても後世に伝えていきたいと思います。この言葉に秘められた数々の親の想い。愛だとか後悔だとか様々な気持ちが1つになって、この言葉となったのでしょう。子供が出来て大きくなったら絶対に言ってやります。

親からもらった名前は最高にして唯一無二の宝物です。何十年経とうが決して色褪せることなく、親の想いが込められた名前だからこそ、生涯輝き続けることが出来る。本書を読んでちょっぴり私自身の名前が好きになりました。

「人は何かと何かを比べた時に錯覚を起こす」地蔵さんが言った言葉です。他人と比べることで自分の欠点ばかりに目が行き、本来備わっている美点さえも見失ってしまうというもの。隣の芝生は青く見えるものです。他人とばかり比較しすぎて、自身を見失うことは非常にもったいないこと。人である以上、私は私。私の代わりはいないし、誰かの代わりでもない。そんな唯一の私でありたいと思います。

事実と別れ

ヤスばあちゃんが地蔵さんの離婚の真実を知る時。咄嗟に夏美が口を開いたシーンで胸が熱くなり、思わず涙ぐんでしまいました。言うなれば彼女たちは他人でしかない、しかしその距離を超えてまで伝えなければならないと思ったのだろう。人から言わせればそれは余計なお世話かもしれない、しかし今回に限って言えば誰かが伝えなければならなかった事実。そして35年の歳月経て漸くとけた蟠り。ヤスばあちゃんと地蔵さんのお嫁さん、そして地蔵さんの子供である公英。本来あるべき家族の形をこれから時間をかけて取り戻していくのでしょう。幸せになってほしい・・・

しかし人である以上別れは訪れるもの。永久に続くであろうと思われる時間でさえも、終わりを告げる鐘はあっさりと鳴り響くのだ。最愛の人の最後を看取ることは、非常に辛いかもしれない、しかし絶対にその場に居合わせないといけないと私は考える。看取られる人が最後に見たいもの、それは絶対に最愛の人たちに決まっている。涙でくしゃくしゃになった顔かもしれない、しかし私は出来る限り笑顔で見送ってあげたいとも思う。不謹慎だと言われるかもしれない。だからこそ涙でくしゃくしゃにした顔で笑ってみせるのだ。同様に私がこの世を去るときも、涙よりも笑顔で見送って欲しい。最後の瞬間まで誰かの笑顔を見ていたいと・・・そう思うのだ。

天才とは

雲月の口にした覚悟。それはその道に生きるからこそ中途半端ではいけない。「神は細部に宿る、爪の先ほども妥協はするな」それは最後まで力を緩めることなくやり通し、微々たる手抜きさえしてはならないというものだった。そしてそれを果たした者こそ天才と言われるのだと。スタートラインが異なることはよくある事です、そこからどう努力を積み重ね工夫を凝らし愛を注ぎ込めるか。ここに天才と言われる所以の全てが詰め込まれているのでしょう。そしてそれだけ覚悟を決め本気で彫る、雲月は地蔵さんが大好きだったのでしょう。そうでなければお願いすら聞き入れなかったに違いない。その不器用さが何とも愛らしい、夏美やヤスばあちゃんの口にした通り可愛いものなのだ。

最後に

心の浄化などと言われますが、やはり田舎の空気には気持ちをリフレッシュさせる効果があるのでしょうか。本日も散歩がてら畦道を好きな音楽を聴きながらブラブラしていました。畑で呻き声をあげる大きな機械・カエルの大合唱・カラスの鳴き声など、目に見えるものや耳に入ってくる音の全てが尊いものに思えてきます。今挙げたものが循環することで自然とともに生きてるんだろうなあなんて考えたり。不便な部分もヒマラヤ山脈ほどありますけどね!疲れ切ったあなたに読んでもらいたい、そんな1冊です。




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