【感想】小川糸「にじいろガーデン」人にはそれぞれの色があり生活がある・・・




こんにちは。朝木です。今回は小川糸先生の

にじいろガーデン

読了いたしました。

あらすじ

夫との関係に悩む泉は、ある日女子高生の飛び込み自殺を止める。事情を聞いているはずが、知らず知らずのうちに自らの身の上話をしていた泉。やがて二人は魅かれ合い、お互いをかけがえのない存在だと知る。家族として共に歩むことを決意し、理想の地を求めて山里へ移り住んだタカシマ家は、母二人、子二人での生活を始めて――。たくさんの喜びを紡いだ一家の軌跡を描く、愛と再生の感動長編。

裏表紙より抜粋

感想

本書の評価点として一つ、各章の物語がそれぞれ別の人物の視点で語られているということ。登場人物全員の気持ちを汲み取る、要するに私ならこうするのにな~といった考えや感想の答え合わせが出来るということ。これは読書にあたっての一つの楽し方でもありますね。

駆け落ち

泉視点の物語。

日常の変化は突発的に訪れる。何気なく起こした行動一つの力により、人生を180度変えてしまうことだってあるのだ。本書の物語の始まり方には夢がありロマンがありました。しかし現実から乖離しているのもまた事実。果たして本当に自身の欲望を叶えるために、小学一年生の息子をフラフラと連れまわすことができようか。今回で言えば多くの要因が積み重なり、結果として三人でいることを選んだようですが、それでも私自身に子供がいたのであれば、もう少し理解のできる年頃まで大きな変化は控えたかもしれません。これも実際親になれば考え方は変化してしまうものかもしれませんが。

うーん。中盤にかけての展開、現実に非常に近い非現実的な内容に、おかしいよねと私は白けてしまいました。千代子の妊娠と新たな家族を加えての新生活。泉は何を生活の軸として考えているのか、少々ブレすぎている気もしました。ある意味人間らしさが如実に表れている気もしますが。そしてあまりにも不埒な行いに気分が悪くなったこともありました。

それに拍車をかけるような千代子の両親のあの反応。厳格な家庭環境なのは前半部分を読んでいて明確です、にも関わらず千代子の突然の帰宅に加え妊娠の報告。激怒を通り越して勘当レベルの出来事だと思いましたが、何故平然と受入れているのでしょうか。両親の心情心描写が非常に少なく、矛盾しているようにしか思えませんでした。

ゲストハウス虹、誕生

千代子視点からの物語。

本書には多くの魅力も存在していました。その一つが草介の人間性です。彼に内在する優しさは非常に素敵で、人を寄せ付ける魅力の一つを彼から学びました。必要な時に必要な言葉をかけ、ある時は人の話に熱心に耳を傾ける相手に興味抱くというコミュニケーションにおける根本的な姿勢が彼からは伝わってきました。

また「ゲストハウス虹」も非常に魅力的で、来る者拒まずの姿勢はまさに家族のようなもの。特に目立つような行き届いたサービスなどはなく、ありのままの生活の中に加わってもらう。温かいご飯をゲストを含めた家族全員で囲み、満点の星空の見える露天風呂、誰の悩みにも耳を傾けてくれる素敵な家主たち。家族のあるべき姿が丁寧に描かれていたと強く感じました。

ハネムーンと夜の虹

草介視点の物語。

千代子の夢とそれを叶える家族の姿。病との戦いからハワイ旅行まで、ページを捲る手が止まりませんでした。絶望から希望へ、彼女たちが過ごしたハワイでの時間は私にとっても幸せなものとなりました。誰かの幸せを見て、私自身が幸せに感じるのは久方ぶりです。それ程までに本書に描かれていた彼女たちは、非常に愉快で終始嬉々としていました。家族で過ごす時間というのは本当にかけがいのないもので、その時間を失ってからその価値に気がつくものです。こうやって小説を読むことで小さな幸せの価値に日常的に気がつけることは、私たちにとっても幸福なのではないでしょうか。

エピローグ、じゃなくて、これから

宝視点の物語。

タカシマ家の物語もいよいよ終盤。胸を痛める壮絶な展開はあったものの、私の心の中にしっかりと家族愛や、優しさの意味というものが刻み込まれました。優しすぎるというのも一つの弱点ですよね。他者の辛さを一身に受け、温もりで包み込み、その辛さを緩和させてくれる。

しかしその優しさにも限界というものがある。気がつかないうちに限界量を超え、知らず知らずのうちにガラス玉に亀裂が入り、やがて割れてしまうかのように心が壊れてしまうのだ。本当にその優しさで誰かが救われていいのだろうか、今度は救ってもらった側の人たちが、そういった優しさを持った人を救っていってほしい。文字通り循環してほしいと心から願いました。

最後に

読み始めは無茶な展開に先が思いやられましたが、読み切って損はありませんでした。寧ろ最後にこそ本書の価値がある。私はそのように感じました。トランスジェンダーが社会問題として取り上げられるようになり、世間の認識も広がったと思います。しかし私たちはそういう人たちがいるというだけで、その人たちの物語を何も知らないわけですね。この時代において知らないでは済まされません。是非この一冊を手に新たな物語を知り、見聞を広めてください。




コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です