【感想】森見登美彦「聖なる怠け者の冒険」主人公だから怠けてはいけないと誰が決めた?




こんばんは。朝木です。今回は森見登美彦先生の

「聖なる怠け者の冒険」

読了いたしました。

あらすじ

社会人2年目の小和田君は、仕事が終われば独身寮で缶ビールを飲みながら夜更かしをすることが唯一の趣味。そんな彼の前に狸のお面をかぶった「ぽんぽこ仮面」なる人物が現れて・・・・・。宵山で賑やかな京都を舞台に果てしなく長い冒険が始まる。著者による文庫版あとがき付き。

裏表紙より抜粋

感想

読後最初に感じたことが、これってたった1日の出来事なんだよなあ・・・ってことです。時間にすれば24時間。睡眠時間を差し引けば16-18時間といったところ。怠け者のくせに充実し過ぎだろ!って突っ込みたくなります。「初志貫徹」という言葉があるように、「人間である前に怠け者である」という信念を貫き通した小和田君。彼のこの姿勢は見習うべきものだと強く感じました。怠け者になるかどうかは別として。ひたすら真っ直ぐに信念を突き通す人って、純粋に格好いいんですよね。我が道を行くって感じがして。

そんな小和田君を始めとする個性豊かな登場人物。彼らが各々の持ち味を活かし、お互いの生活に彩りを足しているようで羨ましくも思いました。特に本書の主人公で小和田君。怠け者である事を誇りに思い静謐を好み、怠け者ある事を真面目に滔々と語る彼はある種の魅力で満ち溢れていました。

冒険とは何もファンタジー要素を含む壮大な世界観のみを指すのではない。ある町のある人の小さな小さな日常が冒険にだってなり得るのだ。京都の宵山を舞台に繰り広げられる日常の中にある不思議な冒険譚。私の生活も視点さえ変えれば大冒険になり得るのではないかということ。日常を楽しく生きることこそが我々に与えられた天啓なのかもしれません。

「主人公だから怠けていけないと誰が決めた。」作中の言葉だがまさにその通りである。怠けていたって起こることは起こるときにしか起こらないのだ。もちろん自ら進む冒険は一味違う楽しみがあるだろう。頑張ることはもちろん大切な行為である。しかし頑張り過ぎだと疲れないだろうか?自分の内なる怠け者の声に対して、その声押し殺し自らを叱咤激励する。その内なる怠け者の声だって自分の本心ではないか。時には流れに身をまかせることも大切なのだと、本書を通して学びました。

そして本書の魅力はなんと言っても、著者が綴る京都の街並み。下鴨幽水荘や八兵衛明神、祇園祭宵山や山鉾巡行。鮮明に描かれる京都は他のどの作品にも引けを取らないと感じました。京都を好きになるのは時間の問題なあ。森見先生の作品を読めば読むほど、京都という町の魅力に気づかされていくようです。

最後に

今回も森見ワールド全開の作品です。京都をあてもなくぶらぶらしたくなる。京都自体はよく行くのですが、私と著者の感じる京都は全く違いましたね。まさに京都の魅力を再確認させられた感じがします。私も1人で小冒険してみようかなあ。なんて金曜日の夜に思ったり。今回も荒唐無稽であり、ナンセンスな作品なのかもしれない。けれどそこに読者である我々が、驚くような面白さを含ませるのが森見先生なのである。この人の作品は一種の麻薬的ものなのかもしれない。この世界観にハマった私は、きっと著者の全作品を読むであろう。内なる怠け者に負けなければ。




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