【感想】鴨志田一「青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない」大人になる・・・ただ当たり前なことに涙する




こんばんは。朝木です。鴨志田一先生の

「青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない」

読了いたしました。

「青春ブタ野郎」シリーズの紹介。

2017.06.10

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あらすじ

「ふたりはいつから同棲してるの?」こたつを囲んで左に初恋相手の翔子、右におつきあい中の麻衣。クリスマスまで1ヵ月をきったその日、やむなく始まった翔子との同居生活が麻衣にばれ、咲太は人生最大の窮地に立たされていた。そんな中、中学生翔子が病状の悪化で入院していることが発覚する。「おとなになることは、わたしにとっての夢でした」そう語る翔子の運命は。麻衣と咲太に入った亀裂の行方、そしてついに解き明かされる「大人翔子」と「中学生翔子」の秘密。空と海に囲まれた町で始まる僕らの恋の物語、緊迫のシリーズ第6弾!

表紙より抜粋

感想

初めに言っておきます。悲しい運命に心を痛め、理不尽な世の中を恨み、全てを包むような温かな感動を得ました。本を読んでこんなにも対照的な気持ちになったのは生まれて初めてです。これまでも感動するお話を中心に選んできましたが、どの作品よりも群を抜いていました。

翔子ちゃんのたった一つの大きな夢。それは大人になる」こと。翔子ちゃんの抱いている、当たり前で切実で純粋な言葉を目にした時、体が雷に打たれたかのような、重い衝撃が心にまで響きました。そして翔子ちゃんの抱いている思いにただ呆然としてしまいました。明日が来るかどうかがわからない状況で、周囲に心配をかけないため明るく振舞う・・・並の人間ができることではないですね。それでも絶望することなく、前向きに今日を明日を生きていたいと強く思っていました。それはきっと周囲の温かな人達に優しさや楽しさをもらっているから。誰もが明日は普通にやって来ると、むしろ嫌なことがあれば今日なんて早く過ぎてしまえ、明日なんか来なくていい。そんな風に思ったこともあるのではないでしょうか。普通を生きている人にしてみれば、気がつかないものですよね。明日なんて当たり前に来て去って行くのですから。

そんな翔子ちゃんでも弱音を吐くことはある。「このまま、成長しなくなればいいのに」大きくならなければ、時間が進まなければ、心臓は悪化しないのですから。そんな弱音を両親や一番応援してくれている咲太の前で吐けるわけないですよね。翔子ちゃんの心にはそういった感情がどのくらい詰め込まれていたのでしょうか。そんな感情や気持ちが溢れ出してもおかしくないはずなのに。本当に強い子です。それでも限界はきてしまうもの。咲太を前に涙が溢れ、勢いと感情にまかせてずっと心の奥にしまっていた思いをはき出す。その言葉には一途で澱みのない思いと世の中の理不尽を恨む気持ちが含まれていました。どうして私が病気になったのか、どうして治らないのか、どうして生きることができないのか。中学一年生の翔子ちゃんは小さな体に、これだけの理不尽ともいえる運命に対する思いを溜め込んでいたのです。私も様々な思いを巡らせましたが、やはりここで涙を堪えることは出来ませんでした。

麻衣も大人びた性格していますよ。咲太に対する「好き」という気持ちと麻衣自身が咲太の一番辛い時に力になれなかった事実との間で葛藤していました。誰も悪くないのに、読んでいる私まで悔しい気持ちで一杯になりました。そんな麻衣の鮮烈な心の叫び。こんなにも感動で心を痛めたことが過去にあったでしょうか。鳥肌が立ちました。あの麻衣が感情にまかせて、手を伸ばして触れようものならば、今にも崩壊しそうな精神状態で。どれだけの思いを溜め込んでいたのか。ありったけの「好き」を言葉にした麻衣に泣かされてしまいました。その様子が文章から充分すぎるくらい伝わってきました。そして理不尽な世の中を心の底から恨ましくも思いました。なぜなんだ、どうしてなんだと。

咲太にとっての翔子さんは初恋の人であり、憧れの人でもありました。妹を救うことができず、絶望の淵に立たされていた咲太を優しい言葉で救ってくれた人。翔子さんの言葉がなければ今の咲太は存在しなかったでしょう。「人生はやさしくなるためにある」「昨日の自分よりも、少しでもやさしくなれたらいい」翔子さんの言葉には人の境地とも言える理想の人間像が垣間見れました。「やさしさ」って実際のところ何なのでしょうね。困っている人を助けること?頼みを聞いてあげること?はたまた、奢ってあげること?やさしさにも色々な形があり、人によってその形は違うかもしれません。しかし、形は違えど「やさしさ」という部分には最終的に相手を思っているということ。どんな形の「やさしさ」にも相手を大切に思う気持ちが隠れているのです。

最後に

翔子ちゃんや翔子さんの存在を通して、毎日を生きることの素晴らしさや大切さを改めて実感しました。健康であることの意味を今一度考え直したいです。そして今一度、強く毎日を「生きたい」と願うこと。当たり前だけど忘れがちなこの思いを、日常生活でも頭の片隅に置いておきたいと思いました。どこか遠くで「生きたい」と強く願う人のため、そして何より自分がその日という、一回しか訪れない一日を大切に生きていくために。

本書から物語は大きく動き出します。咲太の胸の傷。なぜ翔子さんが現れたのか。それがわかるだけでも充分に読む価値がある。壮大なストーリーとそれを紡ぎ出す咲太たち・・・そして鴨志田先生。悲しみとやさしさに包まれたこの作品はどこで終着点を迎えるのか。胸の高鳴りを抑えきれません。本書を通して本当の感動を味わってみてください。きっとあなたの中にも残るものがあるはずです。とにかく本書を読んだ時に体に心に走った衝撃は忘れることができません。読み物としても本当に完成された作品です




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