【感想】原田マハ「旅屋おかえり」旅とは出かけるだけで既に意味があるのだ。




こんにちは。朝木です。原田マハ先生の

「旅屋おかえり」

読了いたしました。

あらすじ

あなたの旅、代行します!売れない崖っぷちアラサータレント”おかえり”こと丘えりか。スポンサーの名前を聞き間違えて連呼したことが原因でテレビの旅番組を打ち切られた彼女が始めたのは、人の代わりに旅をする仕事だった。満開の桜を求めて秋田県角舘へ、依頼人の姪を探して愛媛県内子町へ。おかえりは行く先々で出会った人々を笑顔に変えていく。感涙必至の”旅”物語。

裏表紙より抜粋

感想

この物語を読んでいる中で、初めは偶然とは思えないほど出来上がった物語、つまり作られたお話感が拭えませんでした。しかし”おかえり”こと丘えりかの旅を通して読後は、これもきっと必然だったのだろうと。未来には私たちの想像を超える出会いや出来事が待ち受けているのだと、初めに抱いた印象を覆されました。そして何より本書には「人と人とが紡ぐ温かな感動」がありました。

病気と闘う女性の旅とは

難病と戦う真与。家元の跡取りとして厳格な父に育てられ、病気を患うとともに父は離れてしまった。そんな真与の希望を叶えるために旅をする。丘えりと真与との旅を通した繋がりに目頭が熱くなり、涙を堪えきれませんでした。丘えりの旅を通じて真与は何を感じたのでしょうか。あの日の思い出を脳裏に浮かべて、そして明日への希望を抱いたのでしょうか。生きること、それが彼女にとってどれだけ過酷な道になるか。そんな彼女を「おかえり」と迎えてくれる場所がある。この事がどれだけ彼女の生きる希望となり勇気となっただろうか。素直になれない師匠としての父。そんな不器用な父でも本来の父として持っていた優しさ。非常にもどかしく、しかし目の前にある温かい優しさに涙しました。誰にも賞賛されない花。しかしそれは世界で一番愛情を込めて生けられた花世界で一番美しい花であった

 たった一人の家族を求めて

萬社長ととある女性の物語。数奇な運命でした。恋に家族に仕事と、人生における大切なものがたくさん詰まっていました。一生懸命に生きて叩かれて叩かれて強くなった美しい人たち。この言葉は人の成長における大切な要素として読者の胸に刻まれたのはないでしょうか。人生楽しいことばかりではない、もしかすると辛いことの方が多いかもしれない。けれどそれを乗り越えてこそ人は強くなれるのだ。そんな風にマハさんが本書を通して私たちに語りかけてくれたような気がします。そして丘えりの旅に込めた思いとは。ラストの展開には本当に感動しました。人の思いを伝えるのは何も言葉だけではないのだ。思い出の品や愛情を込めて作った何か。それからお互いだけが分かり合える代物。そしてそこに加えられた言葉やメッセージがより一層感動を、本当に伝えたかったことを呼び起こすのだ。物語のラストで手渡されたメッセージはほんの数行だった。しかしそれはどんな言葉よりも救いや幸せの意味を持ち合わせていました。形に残るメッセージがどれだけ人の心を突き動かすのか。今一度、肌身で感じたいと思いました。

 最後に

風景描写がストレートに伝わり、読んでいるにも関わらず旅をしている気分になりました。本書は不思議な魅力を持ち合わせています。また、丘えりが旅屋を通じて旅の醍醐味に気づいていく。「おかえり」の言葉の持つ意味がどれだけ大きな意味を持っていることか。日常において、さりげなく使っている言葉の大きさに改めて気づかされました。

自分ではあくまで仕事として取り組んでいることでも、もしかすると誰かの命であったり希望を繋いでいるのかもしれませんね。身近なところではなくどこか遠くのところで、誰かに必要とされているような気もします。本書にはそう思わせてくれる魅力があります。

旅はその土地、地域の味や風景を楽しむのはもちろんですが、現地の人と触れ合うことも大切なことなのではないでしょうか。「旅は出かけるだけで、すでに意味がある。」その通りなのでしょう。あそこに行こうと決めた時から、すでに旅は始まっているような気もします。下調べを繰り返すなどしているうちに気持ちだけは旅先に行ってしまっていたり。

人生において一生許せないことであったり、後悔し続けることがあると思います。しかし、それすらも長い人生における一抹の出来事に過ぎないのだと。旅を通してそのように感じました。長い時間をかけて自らを苦しめ続ける必要はない。思い切って旅に出て、行動して、冒険してみようじゃないか人生を彩れるのは自分しかいないのだと。旅と人生を照らし合わせながら読むと、また違った感動が待っているかもしれません。




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