【感想】浅田次郎「天国までの百マイル」親を思う気持ちや子を思う気持ちはいつだって変わらない。




こんばんは。朝木です。今回は浅田次郎先生の

「天国までの百マイル」

読了いたしました。

あらすじ

バブル崩壊で会社も金も失い、妻子とも別れたろくでなしの中年男。心臓病を患う母の命を救うため、天才的な心臓外科医がいるという病院をめざし、奇跡を信じて百マイルをひたすら駆ける。親子の切ない情愛、男女の悲しい恋模様を描く、感動の物語。

裏表紙より抜粋

感想

金の切れ目が縁の切れ目。この言葉が現実味を帯びて私の前に現れました。家族と金を天秤にかけた時、どちらに傾くのか。今回の場合は自明の理であった。

子というのは巣立ってしまえば、後の親子関係なんてものは必要ないのでしょうか。そうではないでしょう、どこまでいっても親子の関係とは切れないものなのです。いい意味でも悪い意味でも。その点安男の母への優しさとも言うべき心の在り方には和まされました。他の兄妹に関しては少々幻滅しましたが。子供を頼ろうとしない母、それを顧みないようにする兄妹。そんなものに納得できるわけがないですよね。困った時こそ助け合いだろうと、私は強く感じました。運命とは時に残酷なものである。一番苦労し、一番力のない人間がもっと苦労を強いられるようになるのだから。今回は安男がそうでした。

現在の医療業界の在り方は私にはよくわかりません。ですが、医師としてのプライドと患者の命、どちらを優先するのかなんて一般人からしてみれば後者一択です。救急車のシステムだってそう。何故一刻を争う患者が各地をたらい回しにされなければならないのか。また、お金が無くて医療サービスが受けられない、お金はあっても助けたくないから医療サービスを受けさせたくない。一体何なのだろうか、この人と社会の構図は。もう少し患者に寄り添ったサービスというのがあっても良いのではないでしょうか。畢竟、資本主義国家というところなのでしょうね。医者だってボランティアではないのです。金のためにやっているのだと、本書を読んでいてそのように感じました。

そしてマリの包容力。マリにもマリの人生があるはずです。マリのどこまでも真っ直ぐな人柄、正論を言い当てる人間性は今の安男にとっては欠かせない存在でしょう。出会いが違えばまた別の未来があったのだろうか。恐らく安男にとっては奥さんや子供と同じくらいに大切な存在なのではないのでしょうか。もちろん社会的には認められてはいけない関係なのかもしれないです。子供の目にどう映るかなんて百も承知です。しかしそれでも無くてはならない存在なのでしょう、安男が生きていくためには。

そんなマリの生い立ち。何かがずれていると、違和感も覚えつつもどこか安堵した感覚もありました。おかしい、おかしいはずなのだ、間違っているのはわかっている。でもそれを経験したからこそマリという人間は確立された存在となれたのでしょうか。そんなマリを誇らしく思わせ、そして優しい気持ちにさせてくれた本書には驚きを隠せませんでした。

父が亡くなってからの母の恋物語。一也さんは本当に好きだったのでしょう、安男の母のことを。そして母も一也さんを本当に愛していた。だからこそ苦労をかけさせたくなかった。名字や家柄まで捨てて一緒に苦労をしてくれると言い出した大好きな人に。

豊かであり幸福な状態は人を怠惰にさせる。強者に弱者の気持ちがわからないのはこういうことなのでしょう。言葉は悪いですがとことん苦労した人間は、貧乏のありがたさ金では買えないものの価値を理解しているのです。

後半に登場した曽我先生。ゴッドハンドの異名に加え本当に神のような御心の持ち主でした。患者のことを家族と思い、お金のために治療を手術をするのではない。ただ目の前で苦しんでいる患者を助けたいから私は医者になったのだと。この人こそ善意で、慈愛の心をもって医者をやっているのだと感じました。そしてそういう人間の元には似通った人たちが集まってくる。結果、善意を慈愛を一番とする病院が出来上がったのでしょう。どんな患者でもどんな病でも治療してしまう病院。病室からの風景、オーシャンビューもまさに楽園そのものでした。

最後に

非常に長い旅でした。人は本当に大切なことに一生懸命努力して、必死こいて達成すると何もかもが抜けたかのように崩れ落ちるのだ。それこそ魂までもが抜けてしまったかのように。

オープン・ユア・ハート心をあけ放つことで、人はまた一歩、前へ踏み出せるのだと。

「天国までの百マイル」タイトルがこのようにあるため、百マイルの旅が本書のメインになると思っていたため少々残念な部分もありました。しかしそんな思いを忘れさせるほど、本書の物語は壮大であり過酷でもあり私に大切なことを多く教えてくれました。中には胸を締め付けられるような描写もあります、時には人間に幻滅することもありました。しかし何より医療の在り方家族の絆について考えさせられました。是非一度手に取ってみてください。




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