【感想】藤岡陽子「海とジイ」~長い年月を生き抜いたジイたちの強く温かな物語~




こんばんは。朝木です。今回は藤岡陽子先生の

「海とジイ」

読了いたしました。

あらすじ

自身の最後を見据える3人の、それぞれの人生、それぞれの想い。美しい海辺を舞台に繰り広げられる、人生を希望に変える3編の物語。

表紙より抜粋

感想

海神

いじめにより不登校となってしまった優生とその母千佳。この二人が現実と戦う中で得た、いくつもの大切なこと。そして優生のひ祖父である清次が見せてくれる「人生を生き抜く姿」非常に温かな物語でした。

「人は強くなりたいと思った時から強くなり始めている」この言葉にジイの纏う年長者の貫禄を感じました。

そんなジイと優生の交わした約束。肉体と魂は死後、乖離し優生を奮い立たせる勇気に変わるのだと。ジイの残してくれた言葉を胸に苦難に立ち向かう優生の姿に、涙を隠しきれませんでした。

夕凪

老医師である月島先生と彼とともに診療所を支えてきた看護師の志木。彼らの診療所に閉院が迫る中、突如として失踪する月島先生。彼は一体何を思い、決断したのだろうか。その覚悟に注目しつつ物語のページを捲っていきました。

月島先生が自身の半生を語る中で、一つ私の心に響いた以下のような言葉がありました。「仕事ができるというのは、決められたことをこなすというだけではなく、自分の職業に込められた意味を知り、なんのためにその職務を遂行するのか考えながらやり遂げること」プロ意識とはまさにこのことだと。

ただ給料を得るために職務を遂行することと、常に深い部分で意味を考えながら職務を遂行するのでは、同じスタートラインでも大きな違いが生じることでしょう。世間でもよく言われていますね。「我々は考えることを放棄すれば人間としての役目を放棄することになる」何に対しても考えることの大切さを学びました。

波光

「人は衝撃を受けた時から人生が色付き始める」瀬戸内の島で医師の博物館を営む城山栄一とその孫にあたる澪二。祖父である栄一の語る半生に、人生における分岐点の大切さ、そして何より衝撃から生まれる新たな感覚に大きな感動を受けました。栄一は親友との出会いにより、人生のレールに再度乗ることができたのだ。

人生を変える出来事の始まりとは、案外身近にあるものなのかもしれない。今回のようにそれは石かもしれないし、ある人との出会いかもしれない。そう考えると人生、一度や二度こけたからと捨ててしまうものでもないでしょう。この先辛いことが無いとは言えないし、私もこの言葉に責任は持てません。しかしそれと同等と幸せも待っているはず。「まだまだ諦めるには早いんじゃ無いか?」と本書からエールをもらいました。

最後に

本書の綴る瀬戸内海の島々は、私の海への憧れをより一層強めるものでした。冬の海の凍てつくような夜風、潮の香り、そして全てを受け入れる包容力。海は全ての人にとっての帰るべき場所なのかもしれませんね。




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