【感想】乙一「ZOO 1」ジャンル分け不可能な本書から学ぶこと・・・




こんばんは。朝木です。今回は乙一先生の

「ZOO 1」

読了いたしました。

あらすじ

何なんだこれは! 天才・乙一のジャンル分け不能の傑作短編集が「1」、「2」に分かれて、ついに文庫化。双子の姉妹なのになぜか姉のヨーコだけが母から虐待され・・・ ・・・(「カザリとヨーコ」)、謎の犯人に拉致監禁された姉と弟がとった脱出のための手段とは?(SEVEN ROOMS)など、本書「1」には映画化された5編セレクト。文庫版特別付録として、漫画家・古屋兎丸氏との対談も収録。

裏表紙より抜粋

感想

乙一先生の作品に触れるのは今回が初めてです。最初に申しますと、これほどまでに深く考えさせられた短編集が存在するとは。これまた一瞬にしてファンとなりました。乙一先生独特のグロテスクな表現が、人間の裏の部分を余すことなく再現しており、非常にいい味を出しておりました。

カザリとヨーコ

心の底からこの物語は作り話であってほしいと、強く思いました。小説を読んでいて残酷過ぎるという意味合いで、胸をこれほどまでに痛めたのは初めてかもしれません。虐待の話は日常生活においてもニュースや新聞などで目にしたり耳にしたりしますが、詳しい状況や内容までは自ら知ろうとしませんでした。ですがこの世界における虐待が本書のようなものであるのならば、まさに正気の沙汰ではない。同じ人間だとは到底思えない残酷極まるものでした。関係ない人の話であっても決して目を背けてはならない問題だと確信しました。普通に生きるということがどれだけ幸せなことなのか、自身の置かれた環境に安堵のようなものを覚えました。それほどまでに本書の内容は惨たらしいものでした。

 SEVEN ROOMS

某映画を彷彿させる内容でした。刻々と迫る死の時間。その恐怖というのは、一体どれほどのものなのでしょうか。想像など及ばない、生半可なものではなかったはずです。姉の逞しい姿に涙を隠せなかった。窮地に立たされた時の姉の選択、弟を守るためにとった勇気ある行動。ページをめくる手が止まらない、しかしめくるたびに思う。気持ち悪い、この先を想像したくない、結末を迎えて欲しくないと。しかし決して目を逸らしてはならない、きっとその先に私たちの学ぶべきことが待っているのだと。一瞬家畜動物を描いているようにも感じました。何のために生まれてきたのか、きっと家畜動物に対して私たちがそれを語るのはおこがましいことなのかもしれません。だからこそ食前食後は感謝の気持ちを込めて挨拶をすることが大切なのです。

So-far そ・ふぁー

見えないものを見ようとして。今回はそうではなく、見えていたものが見えなくなった。現実が思い込みにより徐々に乖離していった家庭。両親の不仲が子供に及ぼす影響をこのようにホラー的に描くとは・・・胸の奥を抉られるこの感じ。小説を読んでここまで自分の心境を上手く説明できないのは、初めてかもしれせん。謎の感情が体内で渦巻いている。その坩堝に意識が飲み込まれて行くかのような、行き着く先が定かではない、まさにそのような感覚。何かを演じ続ければその演技は真実となり得るのだ。この物語は真実と虚偽が紙一重だということを教えてくれました。

 陽だまりの詩

本書の短篇集ではこの物語が一番好きです。純粋に生と死と向き合う物語。生きる意味を与えられたロボットが、生きたいと願い死の概念を理解する。本当に温かい物語でした。何かを愛おしく思う、だからこそ私たちは「心」がある事を認識する事ができるのだ。では「心」とは何なのか。ロボットが感情の変化と共に涙を流せば、そのロボットには「心」があると言えるのか。私はロボットに向かって心臓を指しきっとこう答えるだろう。「それはね、ここにあるよ」と。誰かを愛おしく思い、時には胸を痛め、悲しみと共に涙する。一緒に過ごす時間が長ければ長いほど、愛情は増すもの。そこから得られる感情こそ「心」が存在する証拠なのかもしれません。そして別れの時。生きている中で一番「心」を痛める瞬間ですね。それは刹那的であってほしい、しかし愛情が深ければ深いほど喪失感は想像を果てしなく超えてくるはずです。その悲しみをどう受け取り乗り越えるか、これは残された者にとっての永遠の課題と言えるでしょう。逝ってしまった大切な人の分も含めて、人生を精一杯謳歌するのか、はたまた生きる意味を無くし日常を灰色に染めてしまうのか。私は前者で在りたいと強く思います。自分の見る世界に価値を与えてくれたのが、きっとあなたの大切な人のはずです。

よければ併せてこちらもご視聴ください。

ZOO

狂った演技を続けたところで、狂人という事実は変わらないのだ。逃げたくなるような現実、きっと筆者を始め読者である私たちにもあるはず。その部分にどう向き合うのか。逃げ続けるのも一つ、本書のように狂人となるのも一つ、全てを打ち明けて罪から解放されるのも一つです。しかし人である以上道義は重んじたいものですね。

最後に

読後に抱く気持ちは世界観同様、独特なもの。しかしそれを言葉で説明することは本当に難しい。欲を言えば「陽だまりの詩」を長編で書いてほしいですね。心を育む二人をずっと見ていたい・・・どの短編もそれぞれ味があり読んで損はありません。是非一読を!




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